ハチネタブログ
綺麗なキボシアシナガバチの巣
キボシアシナガバチの巣は、地表から1m~2mの木の枝や葉の裏などに作られますが、見かける機会はあまり多くありません。
育房の蓋部分が黄色をしているのが一番の特徴で、あればよく目立ち、他種との見分けが簡単です。
巣はあまり大きくなりませんが、この種の攻撃性は他種と比べてやや強く、剪定作業中などに刺されることがあります。
スズメバチの初期巣 逆さとっくり
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越冬から覚めたスズメバチの女王バチには、働きバチがまだいません。
コロニーの成長に不可欠な働きバチたちですが、女王バチがその最初の働きバチを誕生させるために作るのが、画像のように徳利(とっくり)を逆さにした形状の巣です。
今後の巣の繁栄にとって非常に重要な時期であると同時に、女王バチが自ら幼虫の食糧を調達してこなければならない時期でもあり、巣を空けることが多いために、外敵が侵入しにくい形になっています。
無事に数匹の働きバチが育ったら、大きな巣が作れる場所に引っ越すこともあります。
スズメバチの攻撃方法
スズメバチやアシナガバチの毒針には、ミツバチの毒針にあるような返しがないため、何度でも刺すことができます。
スズメバチはカチカチと大顎を鳴らして威嚇したのち、敵と判断すれば刺す行動に出ます。
今回は、スズメバチの攻撃方法を紹介したいと思います。
・飛びながら腹部を曲げ、その先端にある毒針を直接突き刺す。
刺さった瞬間に毒液を注入し、素早く離れて再び攻撃態勢をとる。
この場合には、針はそれほど深く入らず注入される毒の量も少量ですが、一瞬のことですのでかわすことは不可能といえます。
・脚でしがみつき、大顎でかみついて体を固定し、毒針を突き刺す。
何度も針を突き刺し、毒液を注入する。
しがみついて刺される場合は、毒針が深く入り同じ場所を何度も刺されることになるため、大きなダメージを負うことになります。
この場合には、ジーンズ生地でも容易に針が入ってしまいます。
ハチ用の防具を着て、刺されることを防げたとしても安心してはいけません。
針から毒液を噴射することもあり、目に入ってしまうと強烈な痛みでしばらく目が開けられず、最悪の場合は失明する危険もあるといわれています。
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毒針と大顎(どちらもオオスズメバチ)
毒針は7mmほどで、服の上からでも簡単に貫通して刺すことができる。
大顎は一度かみついてしがみつくと、容易には外せないくらいの力がある。
スズメバチの大きさ比較
① オオスズメバチ
② ヒメスズメバチ
③ キイロスズメバチ
④ コガタスズメバチ
⑤ モンスズメバチ
⑥ チャイロスズメバチ
圧倒的にオオスズメバチが他より大きく、次にヒメスズメバチが大きいのがわかります。
また、キイロスズメバチがこの中で一番小さいということもわかると思います。
ハチに刺されるとどうなる?
刺された痛みや腫れの程度は、ハチの種類によって差がありますので、ここでは、ハチのなかでも強い症状が出るスズメバチを例に説明します。
スズメバチに刺されると、瞬間的に鋭い痛みを感じます。
カッターで切ったような痛みだとか、焼けた釘を肌に付けたような痛みだとか、人によって痛みの表現は様々ですが、私の経験では、焼けた針を突き刺されたような痛みを感じました。
その後、刺された個所を中心に徐々に痛みが広がり、熱を持ちながら腫れが広がっていきます。
刺された痛みは数時間でなくなりますが、腫れは翌日や翌々日くらいにピークになります。
それ以上腫れることができないくらい、関節は曲げられなくなるくらい腫れ上がり、膨満感による痛みに変わります。
顔を刺された場合は、顔全体が腫れ上がり、別人のようになります。
頭を刺された場合は、腫れるゆとりがあまりないため、頭全体が強く締め付けられるような痛みを感じ、顔や首へ腫れが広がっていきます。
症状は、痛みや腫れだけではありません。
刺されて数日後の腫れが引くころ、その周辺に強いかゆみを感じるようになります。
ハチに刺されると、局所的な症状だけでなく、全身的な症状があらわれることがあります。
これは、ハチ毒に対する抗体が過敏に作用してしまう、いわゆるアレルギー反応によるものです。
アナフィラキシーショック
ハチの毒は、多くの成分が含まれた大変複雑な蛋白毒で、それらの成分の共同の作用によって、多岐にわたる症状を引きおこします。
抗体が過敏に作用してしまうことによるアレルギー反応を、アナフィラキシーショックといいます。
アナフィラキシーショックは、痛みや腫れ、かゆみなどの局所的な症状とは異なり、次のような全身的な症状があらわれます。
・軽度の症状 くしゃみ、鼻水、涙やじんま疹が出るなど。
・中度の症状 吐き気、悪寒や発熱、全身脱力など。
・重度の症状 幻視や失神、血圧低下や気道閉鎖による呼吸困難、心機能の低下など。
くしゃみや鼻水が出るなどの症状は、誰にでもあらわれるようなものですので、あわてる必要はありませんが、重度の症状があらわれると命の危険が迫っていますので、すぐに救急車の要請をして下さい。
これらの症状は、刺された直後からあらわれ、死に至るケースのほとんどが5分~1時間以内に起こるといわれています。
このアナフィラキシーショックについて、間違った理解をしてしまっている方がよくおられます。
「ハチに2度刺されると死ぬことがある」というより「アレルギー反応が初めて出るのは、2度目が1番多い」と覚えて貰ったほうが誤解がないかと思います。
2度目に何も症状が出なかったからといって、何度刺されても大丈夫なわけではありませんし、実は1度目であっても症状があらわれることもあります。
アレルギー反応の有無やその症状の度合いは、体質だけでなく、刺された場所や数、その時の体調によって変わるということです。
ただし、過去に重度の症状が出たことがある場合は、再び同程度以上の症状が出る危険性が高いため、刺されたら迷わずに救急車の要請をすることをおすすめします。
蜂の越冬
昆虫は体が小さく、外の気温が下がると体温も下がる変温動物です。
そこで、日本に生息する昆虫の多くは、卵や幼虫、さなぎなどで寒い冬を越します。
そのなかで、蜂は成虫で冬を越す珍しい昆虫です。
スズメバチやアシナガバチのなかまは、ほとんどが朽ち木の中で単独で越冬します。
秋、来シーズンのために誕生した新女王バチとオスバチたちは、巣から飛び立ち、野外で交尾を行います。
交尾を終えた新女王バチは、二度と巣に戻ってくることはなく、体内の栄養分を無駄に使うことを避けるために、そのまま越冬場所に移動します。
女王バチの寿命のおよそ半分にあたる6ヵ月にも及ぶ長期間の行為は、少しのエネルギーの無駄も許されないのです。
成虫で冬を越す昆虫のほとんどが、単独で木や土の中で冬眠するのに対し、冬眠せず体温を下げずに集団で冬を越す、非常に珍しい方法をとるのがミツバチです。
さすがに冬場には、女王バチは産卵をやめ、はたらきバチも子育ての仕事はありません。
大群で体をよせ合い体温が逃げるのを防いで、気温が0℃以下になっても巣の中心を20~30℃に保ちます。
ミツバチたちは巣の外側と中心とを入れ替わりながら温め合い、厳しい冬の寒さをしのぎます。
暖かいうちにたっぷりと蜜を蓄えているからこそ、ミツバチは成虫で、しかも体温を保ったまま冬を越せるのです。
ロイヤル・ゼリーとは?
ロイヤル・ゼリーは、ミツバチの若いはたらきバチが咽頭線から出す特別なミルクのことで、たんぱく質、でんぷん、脂肪、多種類のビタミン、その他の成分が含まれています。
ロイヤル・ゼリーには不思議な力があり、同じたまごから生まれた幼虫に、花粉と蜜を混ぜたものを与えるとはたらきバチになりますが、ロイヤル・ゼリーだけで育てられると女王バチに成長します。
女王バチはロイヤル・ゼリーにより、はたらきバチより早くそして大きく育ちます。
はたらきバチがわずか1カ月程で一生を終えるのに対し、女王バチは3年~5年程たまごを産み続けながら生きることができ、この強い生命力もロイヤル・ゼリーのおかげだといわれています。
ミツバチの天敵
ミツバチにとっての天敵は、オオスズメバチをはじめとするスズメバチのなかまです。
スズメバチは、ミツバチを捕まえ肉団子にして、自分たちの幼虫に食べさせます。
同じミツバチでも、セイヨウミツバチとニホンミツバチとでは、この天敵に対する対応が大きく異なります。
セイヨウミツバチは、明治時代に日本に入ってきましたが、もともといたヨーロッパやアフリカなどでは、大型のスズメバチがいません。
そのため、オオスズメバチなどに対する防衛の仕方が培われておらず、セイヨウミツバチたちは無謀にも単独で向かっていきます。
当然のことながら次々と捕食され、全滅してしまいます。
一方のニホンミツバチは、古くからオオスズメバチの脅威にさらされてきたために、自分よりもはるかに大きい敵に立ち向かうための、集団戦術を身につけました。
スズメバチがミツバチの巣を襲う時は、まず1~2匹が偵察にきます。
偵察のスズメバチを発見すると、ニホンミツバチはそのスズメバチを集団で包み、『蜂球』とよばれる球体を作ります。
そして、体をふるわせ熱を発し、中のスズメバチを熱殺するのです。
スズメバチは44~47℃で絶命するのに対し、ニホンミツバチは50℃近くまで生存が可能なため、自らがぎりぎり生存できる温度まで上げることになります。
しかし、偵察のオオスズメバチを取り逃がした場合には、その後に数十匹の本体部隊に襲われることになり、そうなるとやはり全滅してしまいます。
養蜂場のミツバチは、そのほとんどがセイヨウミツバチですので、スズメバチに対抗する手段を持たないため、人の手で守らなければ、維持することはできないのです。
スズメバチの巣は縁起物?
古くから商家や旅館などでは、スズメバチの営巣が終わった大きな巣を縁起物として大切に飾ったり、撤去せずにそのまま保存したりする風習があります。
スズメバチの巣には入り口が1つあり、そこからたくさんのハチが出入りすることから、商売繁盛・千客万来の願いが込められているのです。
スズメバチは、巣を1シーズンかけて大きくした後、冬には空っぽにしてそれを再び使用したり住みついたりすることはありませんので、営巣の終わった巣をそのままにしておいても危険や害はないものです。
最近はその風習自体を知らない方もたくさんおられますので、旅館を訪れたお客様が驚かれたり恐怖を感じたり、場合によっては苦情を言われることもあるそうです。
「本当はそのままにしておきたいけれど・・・」と撤去を依頼されることがよくあります。
個人のお住まいでも縁起物として扱われることがあります。
スズメバチは、天敵に狙われにくく災害の危険性が少ない場所を選んで巣を作りますので、安全な家屋であるとスズメバチに認められたという証でもあることから、お守りや魔よけとして大切にされることもあります。
しかし、最近はやはりお隣様などご近所様のことを考慮して撤去されるようになってきました。
スズメバチの巣そのものが大きく立派であることや、表面の模様が芸術的な美しさを持っているため、美術品的な飾り物として収集されている方はけっこうおられるようです。
営巣中のスズメバチの巣を発見した場合は、危険ですので速やかに駆除することをおすすめします。