ハチネタブログ
ミツバチの天敵
ミツバチにとっての天敵は、オオスズメバチをはじめとするスズメバチのなかまです。
スズメバチは、ミツバチを捕まえ肉団子にして、自分たちの幼虫に食べさせます。
同じミツバチでも、セイヨウミツバチとニホンミツバチとでは、この天敵に対する対応が大きく異なります。
セイヨウミツバチは、明治時代に日本に入ってきましたが、もともといたヨーロッパやアフリカなどでは、大型のスズメバチがいません。
そのため、オオスズメバチなどに対する防衛の仕方が培われておらず、セイヨウミツバチたちは無謀にも単独で向かっていきます。
当然のことながら次々と捕食され、全滅してしまいます。
一方のニホンミツバチは、古くからオオスズメバチの脅威にさらされてきたために、自分よりもはるかに大きい敵に立ち向かうための、集団戦術を身につけました。
スズメバチがミツバチの巣を襲う時は、まず1~2匹が偵察にきます。
偵察のスズメバチを発見すると、ニホンミツバチはそのスズメバチを集団で包み、『蜂球』とよばれる球体を作ります。
そして、体をふるわせ熱を発し、中のスズメバチを熱殺するのです。
スズメバチは44~47℃で絶命するのに対し、ニホンミツバチは50℃近くまで生存が可能なため、自らがぎりぎり生存できる温度まで上げることになります。
しかし、偵察のオオスズメバチを取り逃がした場合には、その後に数十匹の本体部隊に襲われることになり、そうなるとやはり全滅してしまいます。
養蜂場のミツバチは、そのほとんどがセイヨウミツバチですので、スズメバチに対抗する手段を持たないため、人の手で守らなければ、維持することはできないのです。
スズメバチの巣は縁起物?
古くから商家や旅館などでは、スズメバチの営巣が終わった大きな巣を縁起物として大切に飾ったり、撤去せずにそのまま保存したりする風習があります。
スズメバチの巣には入り口が1つあり、そこからたくさんのハチが出入りすることから、商売繁盛・千客万来の願いが込められているのです。
スズメバチは、巣を1シーズンかけて大きくした後、冬には空っぽにしてそれを再び使用したり住みついたりすることはありませんので、営巣の終わった巣をそのままにしておいても危険や害はないものです。
最近はその風習自体を知らない方もたくさんおられますので、旅館を訪れたお客様が驚かれたり恐怖を感じたり、場合によっては苦情を言われることもあるそうです。
「本当はそのままにしておきたいけれど・・・」と撤去を依頼されることがよくあります。
個人のお住まいでも縁起物として扱われることがあります。
スズメバチは、天敵に狙われにくく災害の危険性が少ない場所を選んで巣を作りますので、安全な家屋であるとスズメバチに認められたという証でもあることから、お守りや魔よけとして大切にされることもあります。
しかし、最近はやはりお隣様などご近所様のことを考慮して撤去されるようになってきました。
スズメバチの巣そのものが大きく立派であることや、表面の模様が芸術的な美しさを持っているため、美術品的な飾り物として収集されている方はけっこうおられるようです。
営巣中のスズメバチの巣を発見した場合は、危険ですので速やかに駆除することをおすすめします。
アシナガバチの天敵
アシナガバチにとって一番恐ろしい敵は、実はアリです。
アリは巣内の卵や幼虫、さなぎを連れ去って食料にしてしまいます。
アシナガバチの巣は、背の低い木の枝などにぶら下がるように作られます。
巣へのアリの侵入を防ぐために、アシナガバチの女王バチは、巣の上部や枝とつながる部分におなかをこすりつけ、アリが嫌がる汁を塗ります。
それでも働きバチが生まれるまでは、女王バチが自ら餌や巣の材料を探しに出なければなりませんので、留守中に巣が襲われてしまうことも珍しくありません。
アシナガバチの巣を狙うものには他に、スズメバチのなかまのヒメスズメバチがいます。
ヒメスズメバチの幼虫は、アシナガバチの幼虫やさなぎを食べ物としています。
ヒメスズメバチはアシナガバチの巣を襲い、幼虫やさなぎを引き抜いて咬み付き、その体液を集めて自分たちの幼虫にあたえます。
スズメバチのなかまの中ではおとなしく、人間に対しての攻撃性は少ないヒメスズメバチですが、アシナガバチにとっては恐ろしい存在なのです。
アシナガバチの巣を襲うヒメスズメバチ | アシナガバチ50匹対ヒメスズメバチ1匹
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オオスズメバチVSキイロスズメバチ
8月下旬になると、スズメバチにとって新女王バチを育てる時期となり、大量の蛋白源が必要になってきます。
しかしこの時期は、夏場いたるところにいた他の昆虫たちが急激にその数を減らしていく時期でもあります。
この頃によく見られるのがスズメバチ同士の戦いで、特にスズメバチで最大・最強と言われるオオスズメバチは、次々と他のスズメバチの巣を襲撃し、幼虫やさなぎを食料として略奪していきます。
コガタスズメバチなどの個体数があまり多くない種の巣を襲撃する場合は、戦いは短時間で終わってしまいますが、巨大な巣・集団を作るキイロスズメバチとの戦いは、非常に壮絶なものになります。
スズメバチのなかでも攻撃性・凶暴性が非常に強い両者の戦いは、オオスズメバチ数十匹とキイロスズメバチ数百匹という圧倒的な数の差で開戦します。
しかし体の大きさがものをいい、キイロスズメバチはオオスズメバチに空中で捕らえられ、大顎で頭や腹を咬み切られて次々と倒されていきます。
襲撃を受けたキイロスズメバチの巣の周辺には両者の死骸が散らばり、そのほとんどがキイロスズメバチの死骸で、数百匹のキイロスズメバチが2~3日で全滅してしまいます。
その後、巣はオオスズメバチに占領され、中が空になるまで居座られます。
このように、昆虫界で頂点に位置しているとされるスズメバチのなかでも、オオスズメバチは別格の強さを誇っていることがわかります。
オオスズメバチの襲撃をうけたキイロスズメバチの巣
外皮が破壊され、オオスズメバチが占領している
チャイロスズメバチの乗っ取り
チャイロスズメバチの珍しい行動をご紹介します。
チャイロスズメバチは自身で巣を作ることができますが、手間をはぶくためにしばしば別のスズメバチの巣を乗っ取ります。
存在自体が珍しいハチですのでかなりマニアックな話になりますが・・・
チャイロスズメバチの女王バチは、モンスズメバチやキイロスズメバチ、コガタスズメバチの働きバチがまだ10匹足らずの若い巣に侵入し、女王バチを殺してその巣の女王になりすまし、巣ごと乗っ取ってしまいます。
チャイロスズメバチは特に強いハチというわけではありません。
別のハチの巣に少しずつ、時には数日かけて接近し侵入するのです。
警戒されてつつかれても、多少の攻撃にもじっと耐えながら近付いて行き、いつの間にかその巣のにおいを体に付け、とけ込んでしまうのです。
巣への侵入に成功したチャイロスズメバチは、隙をついてその巣の女王バチを殺します。
自らの女王が殺されたことに気付かない働きバチたちは、元の女王バチのにおいがたっぷり付いたチャイロスズメバチを自分たちの女王と思い込みしたがいます。
巣の中では元からいた種の働きバチと、新しく生まれたチャイロスズメバチの働きバチとの共同生活が始まるのですが、一か月半ほどでチャイロスズメバチだけになり、巣の乗っ取りが完全に完了します。
チャイロスズメバチ ※左端は女王バチ